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【東京大学 佐々木准教授執筆コラム 連載1/3】データ中心社会におけるインフラとしてのデータセンターとSDGsへの貢献

【東京大学 佐々木准教授執筆コラム 連載1/3】データ中心社会におけるインフラとしてのデータセンターとSDGsへの貢献

本コラムは東京大学未来ビジョン研究センター(旧:政策ビジョン研究センター)佐々木准教授による連載コラム「データ中心社会におけるインフラとしてのデータセンターとSDGsへの貢献」 に基づき分割/編集したものです。参考文献リストは最終回にすべて記載してあります。

佐々木一 氏

執筆者プロフィール
佐々木 一 准教授
東京大学未来ビジョン研究センター/
東京大学大学院工学系研究科総合研究機構イノベーション政策研究センター/
東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻(坂田・森研究室)/
東京大学地域未来社会連携研究機構
https://ifi.u-tokyo.ac.jp/people/sasaki-hajime/

データ中心社会におけるインフラとしてのデータセンター

データ中心社会におけるインフラとしてのデータセンター

政治情勢、自然災害リスク、エネルギー安全保障など、社会を取り巻く環境は大きく変化しつつあるなかで、産業界においても持続可能な社会にむけた視点が醸成されてきた。国連が2015年に提唱した持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)は、そのきっかけとして大きな役割を持つ。これまで途上国を主眼として対象としてきたミレニアム開発目標(MDGs)から範囲と目標を広げ、地球上の全ての人類を含めた包摂的(Inclusive)な目標である。包摂的とは、都市と地方、先進国と途上国、などを分け隔てなく誰ひとり残すことなく対象にしているという意味を包含する。そのための基盤技術としてAI、IoT、ビッグデータなどのデジタル技術も大きな役割を果たすことが期待されている。健康・医療・介護 、モビリティ、インフラ、などデジタルイノベーションがあらゆる生活領域に溶け込み、同時にかつてのデジタル・ディバイドは急速に小さくなりつつある。本稿では、この未来社会を支える基盤として不可欠な要素としてデータセンターに着目し、有り得るSDGsへの貢献について議論をしたい。古くは一部の通信事業者や金融機関にその利用が限定されていたデータセンターだが、いまや大規模で多様なデータを高速かつ安定的に処理する計算機が集中することで、それ自体がSDGs達成に向けて必要なインフラであるといえる。一方で、データセンター自身がもつエネルギー消費の問題は、SDGsを見据えた未来社会を考える上で避けては通れない。いまや国内首都圏における消費電力の約12%、世界全体では全消費電力の2%がデータセンターによるものである。更に今後の消費量は爆発的に急増していくことが想定されている1 2

データセンターの消費エネルギーが文字通り桁外れである米国巨大ITプラットフォーマー(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)が、その持続可能性に取り組むのは必然であると同時に、すでにこの数年で具体的な成果を実現させている。例えばグーグルは、再生可能エネルギープロジェクトへ約30億ユーロの投資を可能にする長期契約に署名した。また、機械学習を用いてデータセンターの消費電力を効率化するというアプローチも積極的に行っており、Deepmindによりデータセンターの冷却のために必要となる電力を40%削減している3。シアトルDenny Triangleにあるアマゾンの建屋では、データセンターが生み出す排熱を、地下水道管を通じて暖房に用いることで従来の4倍程度の暖房効率を実現している4。AWS のエネルギー使用のうち再生可能エネルギー使用率100%を目指しており、すでに2018年1月には、すでに50% 達成している。フェイスブックはRenewable Energy Buyers Alliance(REBA)の創設メンバーであり、アップルは2014年にすでにデータセンターの電力の100%を再生可能エネルギーで賄っており、「サプライヤーの手本となるべく努力を重ねてきた」としている。彼らはデータ覇権社会のプレイヤーとして脅威と認識されている一方で、自ら責任あるエネルギー調達を行っているということも忘れてはならない。これら4社はいずれも、RE100(再生可能電力100%を約束する有力企業の世界的イニシアチブ)のメンバーである。我が国の情報技術産業でRE100に参画している企業は、残念ながら2019年2月時点で存在しない。

データセンターとエネルギーに関わる学術知識の構造

データセンターにおけるエネルギー効率化ついては学術的・技術的に多様な議論がなされている。2018年末までに出版された論文のうち、データセンターとエネルギーの両方の概念を含むものを学術論文データベースWeb of Scienceから収集したところ、1,948件の論文を収集することができた。学術論文は相互に引用関係を有しており、全体を個別知識がおりなすネットワークとみなすことができる。さらにブレイクダウンされた小領域をクラスタとして特定することで、当該領域がどのような知識構造になっているかを把握することを助ける。この論文ネットワークを可視化したものが下図である。

データセンターにおけるエネルギー効率に関する学術論文データの俯瞰マップ
データセンターにおけるエネルギー効率に関する学術論文データの俯瞰マップ

この図から見てとれることの一つに、データセンターとエネルギーを議論している学術分野は大きく分けて3つの主たる小領域で説明できるということが挙げられる。それぞれのクラスタに含まれる特徴的なキーワードや、被引用数の高い論文の上位の情報からそれぞれのクラスタがどのような議論の集合であるかを類推した。1つ目のクラスタは、クラウド化にともなうエネルギー効率化について議論された論文が集まる小領域であることがわかった。多くのアプリケーション/サービスがクラウドコンピューティングの活用に移行するにつれて、大規模で高い運用コストと温室効果ガスの排出をもたらす仮想化データセンターが急増し、エネルギー需要が増している。仮想化や効率的な計算処理をもってエネルギー効率を図ることを提案する論文などが多く含まれるクラスタ(小領域)である。2つ目のクラスタは、データセンターネットワークとして、スケーラブルなシステムを構築することで全体のエネルギー効率を図る論文郡が中心的な議論であることがわかった。3つ目のクラスタは、データセンターの排熱の利用や、効率的な冷却のあり方について議論している論文が主たるテーマを占めるクラスタであることがわかった。本稿ではこの3つ目のクラスタで議論されているような、データセンターのエネルギー効率化についてより注目する。高効率なエネルギー消費を実現するデータセンターを総称してグリーンデータセンター(もしくはグリーンエナジーデータセンター)と呼ぶが、とくにデータセンターの総消費電力の30%から50%を占める冷却に対するコストとエネルギーは喫緊の課題である。この問題は、データセンターが設置される環境に大きく依存し、逆に言えば寒冷地での安定的なオペレーションで大幅にエネルギーを削減することができる。事実、北極圏やノルウェイのフィヨルドにデータセンター設置する取り組みが存在する。また、マイクロソフトは海中にデータセンターを設置するプロジェクト「Natick」を進めている(このように、冷却に雪氷をもちいるデータセンターを得にホワイトデータセンターと呼ぶこともある。)。

データ中心社会とデータセンターによるSDGsへの貢献

データ中心社会のインフラともなるデータセンターの持続可能性は、世界中のデータセンターにおいて共通課題である。改めてその認識を具体的なものにする為にも、データ中心社会におけるデータセンターがSDGsへの貢献を議論することは有意義である。情報技術で解決できる社会課題が益々増える中で直接的、間接的問わずSDGsへの貢献の幅は極めて広い。以降では、17のゴールあるいはその中の具体的なアクションに関連して、どのような大規模データ処理が用いられるかを議論する。静的テキストデータだけではなく、リアルタイムな画像データや動画データが急増することで、データセンターがいかにインフラとして重要となるかを再確認したい。

第2回連載コラムはこちら

【東京大学 佐々木准教授執筆コラム 連載2/3】データ中心社会におけるインフラとしてのデータセンターとSDGsへの貢献

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