コラム:SDGs

【東京大学 佐々木准教授執筆コラム 連載2/3】データ中心社会におけるインフラとしてのデータセンターとSDGsへの貢献

【東京大学 佐々木准教授執筆コラム 連載2/3】データ中心社会におけるインフラとしてのデータセンターとSDGsへの貢献

本コラムは東京大学未来ビジョン研究センター(旧:政策ビジョン研究センター)佐々木准教授による連載コラム「データ中心社会におけるインフラとしてのデータセンターとSDGsへの貢献」 に基づき分割/編集したものです。参考文献リストは最終回にすべて記載してあります。

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【東京大学 佐々木准教授執筆コラム 連載1/3】データ中心社会におけるインフラとしてのデータセンターとSDGsへの貢献

「データ中心社会とデータセンターによるSDGsへの貢献」について、引き続き紹介する。

佐々木一 氏

執筆者プロフィール
佐々木 一 准教授
東京大学未来ビジョン研究センター/
東京大学大学院工学系研究科総合研究機構イノベーション政策研究センター/
東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻(坂田・森研究室)/
東京大学地域未来社会連携研究機構
http://ipr-ctr.t.u-tokyo.ac.jp/jp/info/member/sasaki.html

「1. 貧困をなくそう」

1. 貧困をなくそう

貧困を無くすためには貧困を特定する必要がある。その手段は多岐にわたるが、多くは人口統計と健康調査(DHS)が中心である。しかしながら、特に発展途上国では経済あるいは生計に関する信頼できるデータが極めて乏しい。衛星画像を用いたリモートセンシングによる貧困特定は、かつて夜間照明の有無を経済活動の説明変数としていたが十分に説明ができない課題が残っている。Jean(2016)らは、ナイジェリア、タンザニア、ウガンダ、マラウイ、ルワンダの5つのアフリカ諸国に対して人工衛星による画像データに対し転移学習を適用、経済変動の75%を説明できるモデルを提案している5。これは従来の、夜間照明によるモデルと比較して大幅な改善をしめす。深層学習の技術的発展に伴い、畳み込みニューラルネットワークを中心に衛星画像データの説明力が高まっている。

「2. 飢餓をゼロに」

2. 飢餓をゼロに

「漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業の実践」に貢献する。これは「2. 飢餓をゼロに」の具体的なターゲットのひとつである。オンラインセンサー、一般パケット無線サービス(GPRS)、GPS、RS(リモートセンシング)、VRTを用いた精密農業(Precision Agriculture)は、いくつかの発展途上国(インド、スリランカ、中国、タンザニアなど)の農作物、例えばサトウキビ、お茶に適した技術として注目されている6。またワイヤレスセンサネットワークを用いた灌漑管理7、農地モニタリング8、温室効果ガスモニタリング9、農業生産プロセス管理10、作物病リスク評価11といったデジタル技術の農業へのアプリケーションは伝統的な農業を環境にやさしい持続可能な農業へと変革するものである。

「3. すべての人に健康と福祉を」

3. すべての人に健康と福祉を

健康と福祉は、ビッグデータとの親和性が高いドメインのひとつである。データ駆動型の臨床における意思決定支援ツール、電子医療とゲノミクスに基づいた疾患予測ネットワークなど多くのアプリケーションが期待されている。しかしながらこれまで、ヘルスケアの業界では膨大なデータが蓄積されていたにもかかわらず、そのほとんどがいわゆる非構造データであった。これは、これらのデータが効率化を生むための資産ではなく医療提供の副産物として認識されていたからに他ならない12。現在、利活用を前提としてデータを収集・整理していく動きが世界的にもヘルスケアにおいて標準となりつつある。実際に我が国では政府が国民の健康寿命の延伸のため、「全ての健康保険組合に対し、レセプト等のデータの分析、それに基づく加入者の健康保持増進のための事業計画としてデータヘルス計画の作成・公表、事業実施、評価等の取組を求める」としている。なお、東京大学政策ビジョン研究センターでは、データヘルス研究ユニットとして労働生産性の損失とその影響要因との関係を明らかにし、効果検証のスキーム構築、及び効果的な介入の開発を行い、中小企業における健康経営の更なる普及に資する活動をしている13

「4. 質の高い教育をみんなに」

4. 質の高い教育をみんなに

いまや教育も情報通信技術と切り離せないドメインである。「2020年までに、開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国、並びにアフリカ諸国を対象とした、職業訓練、情報通信技術(ICT)、技術・工学・科学プログラムなど、先進国及びその他の開発途上国における高等教育の奨学金の件数を全世界で大幅に増加させる。」はこのゴールのひとつのターゲットである。STEM教育(科学・技術・工学・数学)を受けた若者は、教育中もまたその後の将来においてもデジタルツールへを高度に利活用する能力を持つことが当たり前のものとなることが想定される。また、いまや教育は若者だけのものではない。リカレント教育をはじめとした学び直しが注目される中、老いも若きもSDGsの理念「誰一人取り残さない-No one will be left behind」のもとに教育を、そしてその活用の場を提供できる社会でなければならない。

「5. ジェンダー平等を実現しよう」

5. ジェンダー平等を実現しよう

「女性の能力強化促進のため、ICTをはじめとする実現技術の活用を強化する」。これはゴール5のアクションのひとつである。ジェンダー問題になぜICTが重要であるかといった観点には機会、キャパシティ、相互理解の3つの観点があげられる14。ICTは年齢、地域、国籍、立場を超えてすべてのビジネスがグローバル市場に置いて同等の立場で競争することを可能としてきた。それはジェンダーについても同様である。女性起業家が世界市場に参入しつつあるなか、ICTを利用することでジェンダーを含むあらゆる立場の差はますます小さくなることが期待される。ICTは、これまで女性に対して不十分であった医療や教育などの基本サービスのアクセシビリティの向上を実現しやすくしてきた。またジェンダー賃金格差に対してもブロックチェーンを基盤としたサービスの提案がなされつつある。ジェンダー平等にICTが貢献している中で、ビッグデータやIoTといったツールが普及するとともに一層の貢献が期待できる。

「6. 安全な水とトイレを世界中に」

6. 安全な水とトイレを世界中に

水の惑星である地球も、淡水に限って言えば全体の2.5%程度にすぎない。いわゆる発展途上の国の8割は飲料水を利用できないばかりか、アフリカでは飲料水の75%が地下水からのものであり、伝染病の原因ともなっている。一方で、水質汚染のモニタリングによってコレラなどを一定程度予防できることがわかっており、安全な水の提供のためには、無線センサーネットワークを用いた水質モニタリングは有効なソリューションといえる15。また、トイレについてはIoT化が進みやすい空間のひとつとされている。座るだけで非侵襲で血圧などの健康状態を測定するアプローチ16などが実装されるなど、ヘルスケアビッグデータの利活用の例として注目されている。

「7. エネルギーをみんなにそしてクリーンに」

7. エネルギーをみんなにそしてクリーンに

こと我が国では、震災を機に集中型エネルギーシステムの脆弱性が露呈された。スマートグリッドや地域分散型エネルギーシステムネットワークが増加していくことが予想されているなかでも、同時同量制約下における発電機の運用が前提になることは変わらない。各地域における過去の電力利用データに基づく供給マネジメントシステムは不可欠であり、需要予測システムなどの構築が進んでいる。そのためのデータセンターはすでに不可欠なインフラのひとつとなっている。

「8. 働きがいも経済成長も」

8. 働きがいも経済成長も

仕事と生活の調和(ワークライフバランス)と生産性向上の両立のための社内ビッグデータの利活用の取り組みが、官公庁・企業問わず活発になりつつある。会議時間や、残業時間の減少など定量的に評価可能な指標を可視化するといった試みはデータを用いた活動として直感的にわかりやすい。一方で、いまやあらゆる産業が徐々に労働集約型、資本集約型から知識・情報集約型の産業に以降しつつあることを忘れてはならない。そのような中では労働時間をかければかけるほど生産できるというこれまでの発想は変えていく必要がある。AI、ビッグデータによって、人間が行わなくても良いような作業と人間が行うべき作業はより意識したビジネスのあり方が求められる。また、在宅勤務や副業の緩和などの働き方自体が多様化すると、地理的時間的な制約はこれまで以上に柔軟になる。結果として業務自体をクラウド上で行うことが一層標準的になることから、働き方改革に対してもインフラとしてのデータセンターが不可欠である。

「9. 産業と技術革新の基盤をつくろう」

9. 産業と技術革新の基盤をつくろう

データはあらゆる産業を横断する資源であると同時に、あらたな産業を変革しつつある。第四次産業革命の主要技術である人工知能(と呼称されるあらゆる情報技術)は、ものづくりや生産システムのあり方を大きく変えうる。これらの技術はスポーツの分野にも進出し、アスリートのパフォーマンスを向上はもとより、エンターテイメントとしてのスポーツ観戦のあり方も大きく変えつつある。またGAN(Generative adversarial networks:敵対的生成ネットワーク)に端を発した生成モデルは、音楽や絵画を含むアートの活動すらも大きく変えている。産業や文化を大きく変革するような技術基盤をつくるには、インフラそのものが頑健でなければならないことは言うまでもない。

「10. 人や国の不平等をなくそう」

10. 人や国の不平等をなくそう

World Economic Forumは、2027年には世界の国内総生産(GDP)の10%がブロックチェーンで管理されると予想している17。ブロックチェーン技術によって期待されている変革の一つが経済格差の解消である。中央集権で管理されていた信用担保機能がもつ脆弱性、不透明性は多くの国で不平等の起因となっている。国家という概念が薄い地域では、安定的に信用を担保できる中央という概念自体が幻想である。実際アフリカでは銀行口座を持っている人口は20%、ケニヤでは10%、タンザニアでは5%にすぎない18。価値を交換する媒介としての信用そのものを分散管理による取引・交換を可能とするブロックチェーンは取引の透明性を高め詐欺や汚職を減らすことが期待されている19。ペルーの中道政党は、ブロックチェーンをして腐敗や汚職と戦う、と有権者に宣言するほどである20。Transform Africa Summitとよばれるサミットが毎年キガリ(ルワンダの首都)で開催されているが、ブロックチェーンのセッションが毎日あるなど、南アフリカにおいてもブロックチェーン技術への関心は極めて高い。

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【東京大学 佐々木准教授執筆コラム 連載3/3】データ中心社会におけるインフラとしてのデータセンターとSDGsへの貢献

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