コラム:SDGs

【東京大学 佐々木准教授執筆コラム 連載3/3】データ中心社会におけるインフラとしてのデータセンターとSDGsへの貢献

【東京大学 佐々木准教授執筆コラム 連載3/3】データ中心社会におけるインフラとしてのデータセンターとSDGsへの貢献

本コラムは東京大学未来ビジョン研究センター(旧:政策ビジョン研究センター)佐々木准教授による連載コラム「データ中心社会におけるインフラとしてのデータセンターとSDGsへの貢献」 に基づき分割/編集したものです。参考文献リストは最終回にすべて記載してあります。

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【東京大学 佐々木准教授執筆コラム 連載2/3】データ中心社会におけるインフラとしてのデータセンターとSDGsへの貢献

「データ中心社会とデータセンターによるSDGsへの貢献」について、引き続き紹介する。

佐々木一 氏

執筆者プロフィール
佐々木 一 准教授
東京大学未来ビジョン研究センター/
東京大学大学院工学系研究科総合研究機構イノベーション政策研究センター/
東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻(坂田・森研究室)/
東京大学地域未来社会連携研究機構
https://ifi.u-tokyo.ac.jp/people/sasaki-hajime/

「11. 住み続けられるまちづくりを」

11. 住み続けられるまちづくりを

カナダのトロントは、サイドウォーク(アルファベット(グーグル)の関連会社)の実験都市として有名である。これはトロントのウォーターフロントのいち区画を最先端のテクノロジーを駆使したエリアに再開発するものである。具体的には、自動運転車のみが走る道路や、キュービックパズルのように分けられた「Loft」と呼ばれる空間デザインによる建築や、エネルギー消費量を極めて効率化したまちである。電力消費量、騒音、空気汚染、ゴミの量、人の移動など、あらゆるものをデータで管理する。Soceity5.0が標榜するような、サイバー空間におけるテクノロジーがフィジカル空間と融合するまちのありかたの一つである。知識集約社会におけるデータのありかたは、まちづくりにとってますます欠かせない要素となる。

「12. つくる責任つかう責任」

12. つくる責任つかう責任

今やRFIDやIoTによって、極めて低い運用コストでサプライチェーンにおける追跡が可能になっており、ブロックチェーンをはじめとする分散型台帳技術により一層可能性を広げている。世界における食のトレーサビリティ技術の市場規模は2016年時点の107億ドルから2021年には151億ドル程度になりうる21。EUでは、細菌汚染や遺伝子組み換え(GMO)などの観点から、食品の生産並びに輸送を正確に追跡することが一般食品法で求められ22、米国においても2006年のバイオテロ法で同様に法制化されている。一方で日本においては依然として強制力がないが、消費者の意識向上と業者の自主性によって事実上のトレーサビリティが実現しつつある。また、つかう責任つくる責任は食品にかぎらない。自分が使っているものがどのような原材料で誰がどのような環境で採取したものなのかを意識することは、消費行動そのものを変える。必要であるから買う、欲しいから買う、のみならずそれを作っている企業を応援したいから買うという側面がより強くなる消費のあり方が標準的になる未来はそう遠くない。

「13. 気候変動に具体的な対策を」

13. 気候変動に具体的な対策を

コロラド大学ボールダー校内にある米国雪氷データセンター(National Snow and Ice Data Center:NSIDC)は氷雪圏の観測およびデータの管理・配信などを行う研究機関である。南極の棚氷の力学モデル、雪のリモートセンシング、土壌の凍結融解サイクル、また北極海および南極海をリアルタイムに監視し、定期的な分析結果を提供している23。これらは地球の気候変動を把握するために極めて重要な研究である。世界中に120テラバイトの科学的データを提供し、24時間稼働するデータセンターは、冷却だけで34万世帯に電力を供給するのに十分な電力(年間30万キロワット時以上)が必要となる。この米国雪氷データセンターはそれ自体がグリーンデータセンターでもありさらにいえばホワイトデータセンター(雪氷を用いた冷却技術によるエネルギー効果を実現したデータセンター)でもある24

「14. 海の豊かさを守ろう」

14. 海の豊かさを守ろう

漁業は人間による天然資源の獲得のなかで広く行われている活動のひとつであるが、その実態が十分に定量化されていなかった。世界中でおきている漁業資源の乱獲は、全体で年間830億ドルの減獲であるという25。世界中の海洋漁業活動を可視化するサイトGlobal Fishing Watchによって、これまでであった海洋漁業の実体がよって明らかになった26。Global Fishing Watchは、グーグル、OCEANA(海洋NGO)、SkyTruth(漁業NGO)の3社によって運営がなされており、人工衛星から得られた漁船の位置情報をもとに乱獲の実体や、密漁などの違法漁業を特定する試みを進めている。位置情報のトラッキングのみならず、漁船の移動パターンから異常検知を行う仕組みも取り入れられている。例えば、漁獲した魚を別の船へ積み替える転載という行為が、違法漁業、虐待的労働慣行、人身売買などの違法行為を伴うものであることが多いという。漁船の行動パターンをもとに、転載している船舶を特定する機械学習アルゴリズムを実装するなどの実現に成功している。Global Fishing Watchが目指すのは世界中の漁船の監視と可視化である27

「15. 陸の豊かさも守ろう」

15. 陸の豊かさも守ろう

LiDAR(Light Detection and Ranging)を用いることで、旧来のリモートセンシングでは得られなかった高さ方向のデータを直接得られるようになった。高さ方向の情報は、森林を対象としたリモートセンシングにおいて非常に重要であるが、近年では人工衛星のみならずドローンでそれを実現しつつある。フロリダ州オーランドのドローンベンチャーHarris Aerial社などはガソリンと電気のハイブリッドでLiDARを搭載した状態でも数時間飛行できるドローンを開発している28。大量の高解像度画像や高FPSの動画をリアルタイムで処理するためにはインフラとして頑健なデータセンターが必要となる。

「16. 平和と公正をすべての人に」

16. 平和と公正をすべての人に

パトリックメイヤーはハイチ地震が発生した際に被災状況をリアルタイムマッピングしたことで有名となった、人道支援や自然災害に対するテクノロジー活用を訴える活動家のひとりである。彼が発端となった活動は、災害のみならず抑圧的支配下にある国々の現状をクラウドソーシングでマッピングすることによる現状把握と是正を可能しつつある。人工衛星画像をクラウドソーシングによって解析し、人権侵害の報告を裏付けるようなデータを提供できるかどうか判断する試みを行うシリアトラッカーは良い例である29。グアテマラでは1960年から1996年にかけての内戦のなかで、大量虐殺が行われているのではないかという噂があったが、当時その主張を検証する証拠は出てくることがなかった。Benetechといった、データサイエンスを通じて地政学的問題に取り組む非営利団体は、Software for Social Goodを唄い、グアテマラ警察に秘匿されていたファイルから数十年にわたるデータを分析し、グアテマラで実際に虐殺が起こったことを明らかにした30。あるいはシリアの観点でいえば、難民を救うために仮想通貨のマイニングを用いる活動を昨年ユニセフが提案し話題になった。これは専用マイニングツールを用いて、GPUのアイドルリソースでイーサリアムをマイニングしてもらうことで、ユニセフのウォレットに募金がされる仕組みである31。このように、情報技術は人権侵害の被害者を救うことが可能である。Twitterデータをもとに抗議運動がいつ発生するかを予め予測するような研究も政府支援資金の援助を受けて実施がなされるなど32暴力(Violence)や摩擦(Conflict)を予防するための技術としてもビッグデータは注目を浴びている。

「17. パートナーシップで目標を達成しよう」

17. パートナーシップで目標を達成しよう

以上のゴールを達成するには、社会、環境、経済の課題に対する総合的な活動が必要である。多くの国や地域において必要なデータがまだ十分ではない。公共に資するビッグデータの多くは、依然として民間部門によって収集されているなかで、官民パートナーシップはより広く普及する必要がある。SDGsのためのデータ革命事務総長の独立専門家諮問グループ(IEAG)は、下記の3つの試みを促進するという具体的な提言を行っている33

  • データギャップを埋めるためのイノベーションの促進。

  • 先進国と発展途上国の間、およびデータの乏しい人々とデータの豊富な人々の間の不平等を克服するための資源の動員。

  • データ革命が持続可能な開発の実現に全役割を果たすことを可能にするためのリーダーシップと調整。

以上17のゴールに対してデータ中心社会がどのような形で貢献するのかについて事例を上げた。いくつかナイーブに解釈した面もある。データ覇権社会がもたらす負の側面にはあえて触れなかった。いずれにしても、どのゴールにもデータ中心の社会とその技術基盤となるデータセンターが不可欠であるという主張は言い過ぎではない。なおSDGsの本家(UN)では、データサイエンスやビッグデータがSDGsに貢献できることとして下図のような例を17ゴールそれぞれに対して挙げているので参考にしたい。

データサイエンスやビッグデータがSDGsに貢献できること
Source: United Nation, Big Data for Sustainable Development34

まとめ

SDGsを支える一つの技術としてIT/ICT、ビッグデータ技術は欠かせない要素である。それら技術を担うデータセンターはデータ中心社会におけるインフラの一つである。持続可能な社会を実現するためにはインフラ自体が持続可能であり、フェイルセーフなシステムでなければならない。グリーンデータセンターはそのひとつの解といえる。SDGsは誰ひとり無関係ではいられない現代地球人の目標の一つである。あらゆる企業体は、人的資源はもちろんのこと地域資源、環境資源を活用した社会における公器といえる。いささかブームともいえるSDGsも社会全体の持続可能性と企業のGoing Concern(継続企業の前提)は相互に依存関係にあることを改めて認識する良い機会であると考えたい。
最後に、SDGsのゴールを達成する活動に対して筆者の主観を述べたい。SDGsの17のゴールはそれぞれが独立ではなく、相互に関連しあっている。一つのゴールに向けて活動することが結果として他のゴールに良い影響を与えることもあれば、逆に阻害することもある。もしかしたら、環境に良かれと思って行っているエコ活動が地球全体としては不利益を生むようなこともあるかもしれない。SDGsを通じて我々が受け取るメッセージのひとつは、世界はすべてが繋がったシステムそのものであり、自分自身もその起点であるということである。世界を全体としてみる視座を得ることこそが本当のゴールなのかもしれない。

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