コラム:映像制作

映像制作とワークフローの変遷 その1 ~IT化のはじまり~

映像制作とワークフローの変遷 その1 ~IT化のはじまり~

いま映像制作には、オリジナリティーとスピード、そしてリモートワークでも可能なワークフローの構築が求められており、その実現にはITインフラの整備が必要不可欠です。新型コロナウィルスの影響により映像業界への新たなニーズが高まっている中、映像業界のIT化の歴史、映像制作のワークフローの変遷と今後について、複数回にわたり紹介いたします。

新たなニーズが高まる映像業界

2020年、東京オリンピックは華々しく開催され、日本は多くの外国人観光客で埋め尽くされ日本は好景気を迎える予定でした。しかし、皆さんご存知のように新型コロナウィルスの影響でオリンピックは延期となり、世の中は外出自粛やリモートワーク導入が推奨され、3密を起こさないように外出を控える人々も多く街中は閑散としている状態です。そこで当初、需要が大きくなるのは地デジ、BSのドラマやバラエティー番組かと考えていましたが、放送局にも新型コロナウィルスの影響が及び、4月の番組改編期にも関わらず新ドラマやバラエティー番組の撮影や編集がペンディングとなり、新番組の放送開始延期やバラエティー番組も総集編や傑作選になるなど前代未聞の状況へと発展してしまいました。また局内でも感染者が出たため、演者さんが自宅から参加するという番組も多くなり、放送局が苦労されている様子がテレビ画面からも感じられるようになりました。

そこで一躍脚光を浴びているのがVOD(Video On Demand)業界です。好きな時に好きな動画を好きな視聴環境で見るというニーズが益々高まってきたのです。

図1 主な動画配信・放送・ビデオソフトサービス

新しいビジネスモデルと映像制作の形

図1のようにVOD業界の中でもSVOD(Subscription Video on Demand)、いわゆる定額制動画配信サービスが乱立しているのが今の日本です。日本参入時に"黒船"と恐れられていた外資系SVODサービスが勢いを増しているのは皆さんもご存知ではないでしょうか。

彼らは今までとは違うビジネスモデルをVOD業界にもたらしました。単にハリウッド・メジャー系映画やアニメの取扱本数を増やすのではなく、自社オリジナルコンテンツを増やす事で顧客の囲い込みに成功したのです。視聴者が喜ぶだけでなく製作する側も資金や発表の場を手に入れることができ、それもグローバル企業のプラットフォームが利用できるのです。ある外資系SVOD企業は、日本国内でアニメクリエイターと直接契約をするという今までには無いコンテンツの調達を展開しました。このように新しいビジネスモデルを描けるようになったのも、映像制作のITインフラの変遷があったからこそであると思います。

映像制作におけるIT化の幕開け

映像制作は一部のコンテンツを除き、撮影することから始まります。それまで映像の記録はVTRテープであり、そのフォーマットが制作フローと配信方法(電波で飛ばす)に長年影響を与えてきました。しかし、ほんの10数年前から映像の記録はHDDやSSDなどの記録媒体へ大きく変化し、今までの制作フローがファイルベースへとシフトし始めたのです。これは大きな革命に近いものでした。映画の撮影もフィルムからデジタル撮影へと進化したのです。

映像制作におけるIT化の幕開け

記録媒体が変わった当初は、物理的に次の人へ手渡しするというワークフローがしばらく続きました。カメラ、編集機器などは高価格なものが多く社内外のインフラ投資へ資金を回せなかったという点もありますし、ITネットワークに強い人材も少なく、加えて機器にはまだSDI端子が主流でイーサネットコネクタも稀であったことにも起因していたのでしょう。それを周辺機器で補う形でインフラが形成されていました。ワークフローのIT化はこのような状態で幕を開けていきました。

その後、映像業界全般でファイルを扱う事が徐々に一般的になり、より効率的なフローはどのようなものかを模索し始めました。第1段階としては社内のインフラを整えることです。既存の事務業務などのシステム用にLAN回線は敷かれていましたが、特にポストプロダクションでは本業の編集機器や周辺機器向けのLAN環境は脆弱なもので、フリーアクセスタイプの床下にはまだまだSDIケーブルが縦横無尽に這っている光景をよく見ました。そこにLANケーブルや場合によってはファイバーケーブルを這わすこととなり、システム設計するSI事業者ネットワーク知識と経験値が試された時代です。

映像制作におけるファイルベースワークフローの始まり

映像制作におけるファイルベースワークフローの始まり

映像ファイルは現在主流を占めているコンテナ形式ではなく、そのままのネイティブ形式でやり取りをし、機器側で適当なファイルに変換し作業をすすめ、次の工程へと移っていったのです。社外とのやり取りは、インターネット回線のみのセキュアではない環境や転送速度の問題、また受け入れ側のIT環境事情もあり、結局物理的に媒体をやり取りするという混沌とした月日が続きました。この時代は、ファイルベースワークフローの先行きが見えない戸惑いの時期でもありました。

映像制作におけるファイルベースワークフローの始まり

また、撮影機器はスマホの登場やコンスーマー製品のスペック向上、編集機器はPCスペックの向上により安価になっていき、コンテンツの内容によっては撮影現場でディレクターが低解像度素材から荒編まで行うという、今で言うリモートワークが可能になっていきました。携帯の通信回線では送れないが、ホテルに帰りインターネット回線経由で送ったり、会社に戻りNAS(Network Attached Storage)に格納しイメージを伝えたりというフローが一気に押し寄せてきます。このようにファイル化、機器の低価格化が進むことで効率が上がった一方、ファイル化したことによる弊害も見えてくるようになったのです。

今回お話ししたように、テクノロジーの進化とともに映像業界および映像制作のITインフラも変化が始まりました。この変化が、先々、SVODなど新しいビジネスモデルの登場を可能にすることとなります。

次回は現在までのITインフラの変遷の後半、ファイルベースワークフローの進化についてご紹介します。

Contact

データセンター見学のお申し込み、サービス詳細や価格、資料請求など
お気軽にお問い合わせください