コラム:ホスティング

SaaSインフラの選び方:クラウドと物理サーバーホスティング比較

SaaSインフラの選び方:クラウドと物理サーバーホスティング比較

SaaSは、Software as a Serviceの略です。一昔前は、ソフトウェアといえば、1社1台サーバーにインストールするパッケージソフトウェアが主流でした。そのため、ユーザー企業は、自社でサーバーを購入し、運営していました。
しかし、SaaSの登場により、ユーザー企業は、自社でサーバーを用意する必要がなく、サーバー運用の手間から解放され、サービスとしてソフトウェアを使えるようになりました。また、初期投資の少ない月額料金でアプリケーションが使えることも大きな違いです。

SaaSイメージ図

SaaS事業者といえば、当初はアメリカ発ばかりでした。しかし、日本発で日本独自のアプリケーションをSaaSとして提供する事業者が年々増加しています。中小企業向け財務アプリケーションをはじめ、これまで、パッケージアプリケーションしか選択肢がなかった多くのソフトウェアがSaaSとして提供されるようになりました。

SaaS事業者が、ユーザー企業へサービス提供するためには、サービスインフラが必要です。

SaaS=アプリケション+インフラ

本コラムでは、SaaS事業を始めるに当たって、SaaSインフラとして比較されやすい「クラウドサービス(=IaaS)」と「ホスティングサービス(=物理サーバーホスティング、専用サーバーホスティング)」について、比較します。

1. そもそもSaaS事業者に必要なものとは?

SaaSを始めるに当たって、SaaS事業者に必要なものはなんでしょうか?
アプリケーションそのものを除くと、大きく2つ「SaaSインフラそのもの」と「インフラの運用体制」でしょう。

一般にSaaS事業者、もっといえば、SaaS事業者のエンジニアは、ソフトウェア・アプリケーションの開発技術は持っています。
しかし、ソフトウェアを載せるサーバー機器、OS、ネットワーク機器などの、インフラ技術まで精通しているエンジニアはごく少数です。技術が高度になればなるほど、規模が大きくなればなるほど、インフラ技術とソフトウェア開発技術は、別々のスキル・経験が必要になってきます。

そこで、SaaS事業者としては、自社の独自性が活かせるソフトウェア開発に集中し、インフラ部分は、クラウドやホスティング事業者などにアウトソーシングする傾向にあります。
また、インフラ運用体制のアウトソースも重要です。サーバー機器、ネットワーク機器は故障するリスクがある。ただでさえ忙しい自社のアプリケーション開発エンジニアに夜間のインフラ故障対応を行わせていては、システム開発生産性は下がるでしょう。
クラウドやホスティング事業者は、もしもの故障に24時間体制で対応できる運用体制を持っています。そのため、SaaS事業者は、「インフラ運用」と「ソフトウェア運用」は区別し、ソフトウェアの開発・運用にリソースを集中することが多いです。

この「SaaSインフラそのもの」と「インフラの運用体制」の双方を備えているのが、クラウドサービス(IaaS)とホスティング(物理サーバーホスティング、専用サーバーホスティング)です。

ハードウェアなどインフラそのもの+インフラ運用体制

2. クラウドサービスとホスティングの違い

クラウドサービスとホスティングの違いはなんでしょうか?

まずコスト面を見てみるとクラウドサービスのほうが初期投資が少なく小額から始められます。しかし、使った分だけ課金されるという従量課金制のため、使用量が多いとコストが右肩上がりで膨れ上がってしまいます。一方、(物理サーバー)ホスティングであれば、契約台数・契約内容に沿った固定料金なので予想外にコストが膨れる心配はほとんどないでしょう。ただし、リソースが足りなくなったらサーバーの数を増やしたり、CPUやメモリを増設する必要があります。

次にインフラ構造を見てみましょう。クラウドサービスはサーバー機器やソフトウェア共に非公開です。さらに、他社ユーザーの影響が自社に及ぶ可能性があります。一方で(物理サーバー)ホスティングのサーバー機器はスペックから機種名まで開示されていることが多く、他社の影響が自社に及ぶことはほとんどありません。
また、クラウドサービスは仮想化ソフトウェアなどの独自システムで冗長化体制を取っているため、ダウンタイムが少ないですが、(物理サーバー)ホスティングはサーバー本体の故障時、一定時間のダウンタイムが生じます。

最後に運用体制についてですが、こちらはどちらのサービスも24時間365日の運用体制であることに変わりはないでしょう。

クラウドサービス(物理サーバー)ホスティング
コスト構造
  • ・使ったリソース分だけの従量制料金
  • ・少額から始められる。従量制なので、使用量が多いと右肩上がりでコストが増加
  • ・契約台数・契約内容に沿った月額固定料金
  • ・リソースが足りなくなったら、サーバー台数増加やメモリ・CPUなど増設
インフラ構造
  • ・仮想化ソフトウェアなど、独自の仕組みで冗長化体制をとっている。ダウンタイムが少ない
  • ・サーバー機器、ソフトウェアともブラックボックス(非公開)
  • ・他社ユーザーの影響が、自社に及ぶことがある。
  • ・1ユーザー、1サーバー。故障時は交換。サーバー本体故障の場合は、一定時間のダウンタイムあり
  • ・サーバー機器は、スペックや機種名まで含め開示されていることがある
  • ・他社の影響が自社に及ぶことは少ない
運用体制
  • ・24時間365日の運用体制
  • ・24時間365日の運用体制

3. クラウドとホスティングのコスト構造の違いがSaaS事業者に与える影響

3-1. クラウドサービス利用のコストメリット・デメリット

SaaS事業のスタート直後、利用ユーザー数が少なく、サーバーリソース、ネットワークリソースをあまり利用しない時期は、従量課金制であるクラウドサービスのコストはかなり低コストに抑えられるでしょう。これがクラウドサービス最大のメリットです。

クラウドサービスは、スマートフォンゲームのインフラなどによく利用されています。これは、「大規模なトラフィックに対応できる」というメリットがありますが、当たり外れの大きいゲームでは、低コストで撤退できるメリットもあります。

クラウドサービスの従量課金制が、逆にデメリットになることもあります。クラウドサービスでは、サーバーリソース、ネットワークトラフィックの増加に比例してコストが増えます。
スマートフォンゲームは、ちょっとしたきっかけで、必要リソースが急増します。そのため、ユーザーの利用状況次第で、思わぬ高額コストが発生することも多いのです。

3-2. ホスティングサービス利用時のコストメリット・デメリット

ホスティングサービスのコストは、月額固定課金であることが特徴です。
スタート直後でユーザー数が少ないとき、ホスティングサービスより、クラウドサービスのインフラコストの方が安いことが多いでしょう。
しかし、あるユーザー数を境にホスティングサービスのインフラコストが、逆転して安くなることがあります。ホスティングサービスの固定課金を従量制課金のクラウドインフラコストが追い抜くわけです。

クラウドサービス・ホスティングサービスのコスト比較グラフ

(1)コスト逆転が起きる条件
このコスト逆転現象が起きる条件はなんでしょうか?
CPU、メモリ、ネットワークなどの性能に対し下記の条件が成立することです。
 ホスティングサーバー性能 > 同金額のクラウドサービスの性能 
「ホスティングサーバー1台当たりの性能が、同金額のクラウドサービス性能より上」であれば、ホスティングサービスを選択した方が高コストパフォーマンスになります。

(2)コスト逆転が起きやすい(起きやすくなっている)理由
SaaS事業者のインフラコスト構造は、開発したソフトウェアの構造次第です。しかし、「SaaS事業者」の場合、他のゲームなどのアプリケーションに比べ、「物理ホスティングサービスを利用した方が、クラウドサービスよりインフラコストが低い」という条件に当てはまることが多いです。なぜでしょうか?

<理由1>物理サーバーのスペックが年々上がっている
同じ価格で契約できる物理サーバーのスペックは年々上がっています。これは、半導体性能は18ヶ月で2倍になるというムーアの法則により、同価格のCPU性能・メモリ性能などがどんどん上がっているためです。
SaaSは、一般に法人向けサービスが多いです。法人向けサービスは、それほど多くのスペックを必要としないことも多く、一定規模までのSaaSサービスであれば1台の物理サーバーで十分な場合も多いでしょう。
※一方、消費者向けアプリケーションでは、CGの利用などにより年々必要とされるスペックが上がっている状態です。

<理由2>法人向けサービスは、利用量のブレが少なく計算できる
法人向けSaaSサービスは、必要なインフラ性能が読みやすいという特徴があります。
オンラインゲーム事業者は、インフラにクラウドサービスを選ぶことが多いです。これは物理サーバーでは、急激なトラフィック増に耐えられないことが主要因です。
新ゲームリリース日やゲーム内の特別イベントなどで、想定の何倍ものユーザーが殺到し、オンラインゲームがダウンしたニュースを聞いたことがある方は多いでしょう。

消費者向けサービスに比べ要求性能のブレが圧倒的に少ないのが、法人向けサービスの特徴です。もちろん、「このサービスは、月末に集中しやすい傾向がある」など、ある程度偏りはあります。
しかし、重要なのは、要求性能の見積誤差が少なく、かなり正確に必要スペックを計算できることです。例えば、日によって要求性能の変動があっても、「月末は、通常の2倍のユーザーが利用する」など、ある程度正確に予想できることが多いです。
※ただし、データベースリソースを大きく使う可能性のあるサービスは注意しましょう。データベースは、ときに必要なサーバースペックに大きな影響を与えます。

3-3. コスト構造の違いがサービス収支計算にも影響

また従量課金というコスト方式が、新サービススタートの意外なハードルになる場合があります。
皆さんは事業計画書を書いたことがあるでしょうか? 通常事業計画書では、3年から5年の収支計画を算出し、経営層レベルからサービススタートの承認をもらいます。

計算をしてみるとわかりますが、コストが変動すると、事業計画のシミュレーションは一気に複雑になります。何パターンもの収支計画シミュレーションが必要になるでしょう。
一方、コストが固定で、売上だけが変動するなら、パラメータが1つ減りシミュレーションは非常に楽になります。

また、何パターンものシミュレーションをして事業計画を認めてもらったとします。サービススタートには、当然運営コストの予算計画をたてます。しかし、「このサービスの運営算は、変動するので、やってみないとわかりません」では、社内稟議を通すのは至難の業です。

4. クラウドとホスティングのインフラ構造の違いがSaaS事業者に与える影響

4-1. クラウドインフラのメリット

クラウドインフラのメリットは、冗長性です。1台のサーバーが故障しても影響がないことはもちろん、あるデータセンター拠点全体がストップしても、サービス継続も可能です(契約するサービス内容による)。
一方、物理サーバーホスティングでは、24時間の監視・運用体制をとっているとはいえ、故障部位によっては、交換のため数時間のダウンタイムが発生することがあります。
「インフラ冗長性の点ではクラウドサービスが有利」といって差し支えないでしょう。

4-2. ホスティングインフラのメリット=クラウドインフラのデメリット

各社のクラウドサービスインフラは、ますます巨大化しています。それを支えるのは、高度で複雑な技術、特にソフトウェア技術の集合体です。大手のクラウドサービスともなれば、今や数百万台を超えるサーバーを運用しており、もはやすべてに精通した技術者はいないレベルでしょう。
そんな時に問題となるのが、大きくなりすぎたサービスでのインフラソフトウェアのバグや設定ミスです。現に、クラウド事業者では、あるデータセンターのサービスすべてが丸1日使えなくなるなどの大規模障害を起こすことがまれにあります。

また、クラウドサービスを利用するアプリケーションエンジニアにとって、問題となるのはクラウド事業者インフラが、すべてブラックボックスになっていることです。
順調に稼働している限りは、むしろインフラ運営を気にする必要がなく、メリットにもなるでしょう。問題となるのは、SaaSで利用しているアプリケーションに原因不明のバグや遅延が発生した時です。まれですが、クラウドサービスの仮想化ソフトウェアやサービス構成と開発したアプリケーションの微妙な相性により、サービスが止まったり、遅延したりすることがあります。「起こることはまれ」とはいえ、SaaSサービスは一般に頻繁にバージョンアップを繰り返すものです。原因不明な障害で苦労した開発者の方も多いでしょう。ここで、クラウドサービスが巨大なブラックボックスであるということが、リスクになります。インフラとアプリケーションの微妙な相性の問題は追求しようがなく、そのために障害をきっかけに、大きく仕様を変えるSaaS事業者もあります。

ブラックボックスが多いクラウドサービスに対して、アプリケーション開発者にとって、より安心に開発できるのが、物理サーバーホスティング(物理サーバー上での開発)です。
物理サーバーホスティングでは、メモリ・CPUなどのサーバースペックはもちろん、サーバーの型番まで開示されることもあります。ブラックボックスがなく、開発したアプリケーションとインフラの中間のグレーゾーンの障害の切り分けがしやすいことがメリットです。
ホスティングしている物理サーバーと同じ型でスペックを落としたサーバーを社内開発用として用意している事業者も多いでしょう。このとき、社内開発用サーバーでの障害解消は、即SaaSサービスの障害解消につながります。

クラウドサービスの中身は非公開でブラックボックス 物理ホスティングサービスではサーバー仕様がオープン

5. まとめ

SaaS事業者のインフラの選び方についてまとめました。クラウドサービスと物理サーバーホスティングは、それぞれメリット・デメリットがあります。
自社のSaaSサービスの現状に、もっとあったサービスは何か、しっかり比較して検討しましょう。

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